「困ってる人がいない」問題への3つの対処法
協力隊なら感じたことがある人も多い「困ってる人いない」問題。対処法をまとめます。
はじめに
セネガルに来た当初は「困ってる人」のために頑張ろうと、活動のイメージを膨らして来ました。でも、任地に着いて思ったのが「あれ?困ってる人いなくね?」
それもそのはず。協力隊の入る現場は、紛争などの最前線ではなく、比較的治安の良い地域。僕の生活する地域内にも、紛争や飢餓で苦しんでいるような人はおらず、とても平和な時間が流れています。むしろ、みんなとても幸せそうに生活しています。
配属先も町の人もマイペースに働きながらも、それなりにうまく回っているように見えます。それでも活動を始めなければならない協力隊。そんなときに、活動のきっかけを作る切り口を考えてみます。
1.将来困る人を考える
現状困っていなくても、そのまま放置すると将来困るであろう人を考えるのが、一つの切り口です。途上国がこれから直面するであろう問題について、少し先の時間軸で想像してみるのが良いと思います。
例えば、収入向上について。お金がなくても幸せそうに人を見ると、本当にお金って必要なのかという問いに直面する場面がありました。確かに平時のときはそれでいいのかもしれませんが、果たしてそうでしょうか。
村の病気の子ども
例えば、僕の活動する村でのエピソード。ある日、村を訪れた際、2歳頃の子どもがひどく体調を崩した様子で寝込んでました。しかし、村の人は病院に連れて行く様子がありません。
このままでは子どもの命が危ないと思い、
「少しならお金があるなら、もしお金が原因で病院に連れて行かないのなら頼ってね」
と伝えました。
すると、母親は病院に連れて行きたいといい、病院に同行しました。お金が原因で病気の子どもが放置されていたのです。
結果、重症だったことが判明したものの一命はとりとめました。セネガル人がお金を本当に必要としているか疑問に思うこともありましたが、やはり必要だと再確認しました。
教育や環境も先を考える
教育も同様に先のことを考えることが不可欠です。村では全員を学校に行かすのは無理なので、選ばれた子のみが学校に行き、残りの子は学校に通えません。教育を受けれなかった子は将来、良い職に就くことができず、格差は将来も固定されてしまいます。
他には、ごみのポイ捨てなども、今は良くても、将来的に景観を損ねたり、公害や家畜への害として返ってくる可能性のあるものです。日本人と比べて、セネガルでは先のことを考えることが苦手な人が多いので、先を想像して考えてみることが大切です。
いま困っていなくても、将来困ること、身近に色々あるのではないでしょうか?
2.開発経済学の知恵を借りる
途上国の貧困削減に貢献する戦略を研究する学問として、開発経済学があります。僕は理工学部の出身と全くの畑違いですが、書籍を読んで、勉強するようにしてきました。
途上国の状況や過去の事例について理解すると、活動のヒントになることも多いです。先の例でいうと、所得と乳児死亡率の間に明確な負の相関があることが明らかになっています。他にも、アフリカ農業の研究などは、自身の活動に役立ちました。
また、開発経済学を勉強するメリットとして、普段目にしている実体験が学問として裏付けられていく経験はとても面白いですよ!
協力隊として関わる途上国の問題について、研究されている学問があるなら、勉強してみるべきです。おすすめの本については追って紹介していけたらと思います。
【書評】現役隊員おすすめ!途上国の問題がわかる本「ストーリーで学ぶ開発経済学」
3.それでも現場に足を運び続ける
過去の隊員では「困っている人がいないから活動がない」と言って、家にこもりがちな隊員も残念ながら見ました。確かに任地での課題から、活動のタネを見つけて形にして活動を進めていくのは簡単ではないし、時間のかかることです。
でも、活動のタネは現場にしか落ちてないと思います。 僕自身、村に泊まり込んで村の人の生活を観察することで多くのことに気づきました。
例えば、料理の仕方。まきを使って行っているのですが、石を置いただけのかまどでは効率が悪く、女性は朝昼晩と多くの時間を割いていることがわかりました。また、そのまきは近くの木を子どもが伐採していました。
そこで、燃焼効率の良いかまどを作成し、調理時間を短縮し、使用するまきの量を半減させることができ、村の人からも感謝の声を得ることができました。
↑ 左が改良かまどで、右が従来の石を置いただけのもの。効率が全然違う。
とにかく現場に足を運んで観察することで見えることもあります。精神論っぽいですが苦しい時ほど、足を止めずに動き続けることも大切です。
まとめ
以上、僕の考える「困ってる人がいない問題」へのアプローチでした。
雑にまとめると想像して勉強して足を運ぶ!少しでも参考になれば幸いです。